島国と内陸国、国々の国境【地理のハナシ】

第1部 第1章 世界の姿(2)

はじめに

  • 世界の国の位置をつかむために、さまざまな視点から整理してみましょう。
  • 島国内陸国国境(自然的国境・人為的国境)などの重要語句について解説しています。
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1.島国と内陸国について

島国とは、周囲を海に囲まれた国のことで、島国のことを海洋国と表すこともあります。日本やイギリス、ニュージーランドやフィリピンなどが島国となります。これに対して内陸国とは、陸地に囲まれており、海岸を持たない国のことです。モンゴルやネパール、スイスなどが内陸国となります。

島国は、周りを海に囲まれてるので自由に航海が行えますが、海岸を持たない内陸国は、自由に航海をすることができないのでしょうか。このことについて、次の文献にはこのようにあります。

1 無海岸国は、沿岸国と同等の条件で海洋の自由を享有するために、自由に海洋に出入することができるものとする。このため、海洋と無海岸国との間にある国は、その無海岸国との合意により、かつ、現行の国際条約の規定に従い、

(a) 無海岸国に対し、相互主義に基づいて、自国の領域の自由な通過を許与し、また、

(b) 無海岸国の旗を掲げる船舶に対し、海港への出入及びその使用に関して、自国の船舶又は第三国の船舶に与えている待遇と同等の待遇を許与するものとする。

引用:「公海に関する条約(公海条約)」 日本政治・国際関係データベース 政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

1958年に採択された「公海に関する条約」により、内陸国(無海岸国)は、沿岸国と同等の条件で自由に海洋に出入りすることができるようになりました。このため内陸国は、海洋と自国の間にある国に対して、相互主義に基づいて、海洋と自国の間にある国の領域を自由に通過することが認められています。

2.国境について

国境とは、国と国との境界線のことです。国家の主権が及ぶ境界線でもあります。日本では、近世まで行政上の一区画をなした地(「くに(国)」)の境界も国境と呼ばれていたようです。

近代に領域主権の考え方が広がったことによって、国の領域を境界線で区別するようになりました。現在では、国の領域を他国の領域または無主地、公海から分ける地球の表面上の線のことを国境と呼びます。また、国境は河川や山脈、湖などを国境とする自然的国境と、隣接する国どうしが協定で結ぶ人為的(じんいてき)国境に分けられます。それでは、自然的国境と人為的国境について詳しくみていきましょう。

2.1.自然的国境

自然的国境の例としては、アメリカとメキシコの国境となるリオグランデ川や、フランスとスペインの国境となるピレネー山脈などがあります。

まず、河川が国境になる場合は、船の航行が不可能な河川と可能な河川に分ける必要があります。

航行が不可能な河川では、原則として、両岸からの中央線が国境になる。航行が可能な河川では、原則として、下流に向かう航路の中央線が国境になるが、航路が複数ある場合は、主要な航路の中央線が国境となる。河川はその流れが変わることもあるので、その時には国境も変わることになる。

引用:『改定新版 世界大百科事典』P.381

上記のように、船の航行ができない河川の場合は、両岸からの中央線が国境になります。また、船の航行ができる河川の場合は、下流に向かう航路の中央線が国境になります。しかし、航路が複数ある河川の場合は、主に使われる航路の中央線が国境となるようです。

河川の流れが変わったことで、国境が変わってしまった事例があります。アメリカとメキシコの国境であるリオグランデ川では、河川の流れの変動によって国境が変わってしまい、国境をめぐってアメリカとメキシコが対立することになりました。

次に、山脈が国境になる場合は、特別の合意がなければ分水線が境界となります。また、湖が二つ以上の国家の間にある場合は、特別の合意がなければそれぞれの沿岸国に属する岸からの中央線が国境となります。

2.2.人為的国境

人為的国境の例としては、緯線や経線を利用したものがあります。アメリカとカナダの国境は北緯49度で分けられ、アメリカのアラスカとカナダの国境は西経141度で分けられています。また、アフリカには、エジプト・リビア・スーダンのように植民地の分割の影響が残る国境もあります。

出典など

参考文献

人文地理学会編 『人文地理学辞典』2013 丸善出版

地理用語研究会編 『地理用語集 第2版』2019  山川出版社

『改定新版 世界大百科事典』2007 平凡社

『日本国語大辞典 第二版』2000~2002 小学館

引用文献

『改定新版 世界大百科事典』2007 平凡社

「公海に関する条約(公海条約)」日本政治・国際関係データベース 政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所