さまざまな気候と雨温図【地理のハナシ】
第2部 第1章 人々の生活と環境(1)
もくじ
はじめに
- 世界の人々が暮らすそれぞれの地域には、どのような気候の違いがみられるのかを整理しましょう。
- 熱帯、乾燥帯、温帯、亜寒帯(冷帯)、寒帯、雨温図などの重要語句について解説しています。
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1.気候区分について
気候区分とは、世界の各地の気候を共通する部分で分類することです。ケッペンやアリソフなどによる区分方法があります。ケッペンは、植生の分布と気候との関連に着目し、気温と降水量を指標にしながら世界を5つの気候帯に分類しました。ここでは、ケッペンの気候区分に基づいて、それぞれの気候帯を詳しく確認していきましょう。
1.1.熱帯について
熱帯
熱帯とは、一年を通して気温が高い気候帯のこと。赤道付近の低緯度地域に分布する。
熱帯は、主に赤道を中心として南北回帰線(23度26分の緯線)に挟まれた地帯に分布しています。熱帯には冬がないともいわれ、一年を通して気温の差が小さく、一日の昼と夜の気温の差が大きい地域でもあります。熱帯は、熱帯雨林気候とサバナ気候に分類されます。
熱帯雨林気候は、季節による変化が少なく、高温で多湿な気候です。一般的に赤道無風帯ともいわれるように、風は強くありませんが、海岸地帯では海風や陸風などが吹く場合もあります。午後にスコールと呼ばれるにわか雨が降ることもあり、熱帯雨林と呼ばれる樹木が生い茂る密林も発達しています。熱帯雨林気候は、南アメリカのアマゾン川流域や東南アジア、アフリカのコンゴ川流域などに分布しています。
サバナ気候は、雨季と乾季がはっきりしている気候で、熱帯雨林気候の周辺に分布しています。サバナとは、主に熱帯地方にみられる草木が広がる草原のことで、サバンナとも呼ばれます。サバナの語源は、はっきりしていないようです。一説によれば、アメリカの先住民が使用していた言葉がスペイン語で使われるようになり、英語を経てそれがアフリカに伝わったようです。
1.2.乾燥帯について
乾燥帯
乾燥帯とは、一年を通して降水量が少ない気候帯のこと。中緯度の大陸西岸や大陸内部に分布する。
乾燥帯は、南北回帰線(23度26分の緯線)付近と海からの湿った風が届かない大陸の内部に多く分布します。全陸地面積の4分の1を占めており、降水量と蒸発量の関係から乾燥帯は、砂漠気候とステップ気候に分類されます。
砂漠気候は、一年を通して降水量がほとんどない気候で、砂漠が発達しています。降水は不安定で、まれに集中豪雨があることからワジと呼ばれる涸れ川が見られます。オアシスの周辺に草や樹木が育ちますが、オアシスを除いては、草木がほとんど見られません。
ステップ気候は、数か月の間降水があり、大きな木々は育ちにくい気候です。ステップと呼ばれる丈の短い草でおおわれた草原が広がっています。ステップという言葉は、ロシア語のstep(草原)に由来し、温帯草原や荒草原などともいいます。ステップ気候は、主に砂漠気候の周辺に分布しています。
1.3.温帯について
温帯
温帯とは、四季の変化がはっきりしていて、温暖で適度な降水量のある気候帯のこと。大陸の東岸と西岸、大陸の内部に分布する。
温帯は、熱帯と亜寒帯(冷帯)の間の気候で、季節風(モンスーン)や偏西風の影響を受けます。温帯は、気温と雨の降り方から温暖湿潤気候と西岸海洋性気候、地中海性気候に分類されます。
温暖湿潤気候は、中緯度の大陸の東側に分布している気候帯です。夏は高温で降水量も多く、冬は低温で降水量が少ないという特徴を持ちます。四季の変化が最もはっきりしている気候です。
西岸海洋性気候は、中緯度と高緯度の大陸の西側に分布する気候帯です。西ヨーロッパの大半がこの気候帯となります。偏西風の影響で一年中一定の降水量があり、夏は涼しく冬は比較的温暖という特徴を持ちます。高緯度でも冬が温暖になるのは、偏西風と暖流の影響を受けるためです。
地中海性気候は、中緯度の大陸の西側に分布している気候帯です。夏は高温で降水量が少なく、冬は温暖で降水量がやや多いという特徴を持ちます。地中海性気候という名称から、地中海沿岸だけに見られる気候帯と思われがちですが、アメリカのカリフォルニア州やチリの中部、オーストラリアの南西部、アフリカの南西端などにも分布しています。
1.4.亜寒帯(冷帯)について
亜寒帯(冷帯)
亜寒帯(冷帯)とは、短い夏と長く寒さの厳しい冬がある気候帯のこと。ユーラシア大陸の北部と北アメリカ大陸の北部に分布し、南半球には分布しない。
亜寒帯(冷帯)は、温帯と寒帯の間の気候で、ユーラシア大陸の北部と北アメリカ大陸の北部に分布し、南半球には分布していません。タイガと呼ばれる針葉樹林が広がっています。
亜寒帯と冷帯は、それぞれ訳し方で異なる言葉となります。亜寒帯は、「寒帯よりもやや暖かい気候」であることを意訳した名称です。冷帯は、ケッペンが指標とした植生について説明した際に「Boreal」を「冷帯」と訳した名称です。教科書によって使われている言葉が違うので、それぞれの学習環境に合わせて覚えるとよいでしょう。
1.5.寒帯について
寒帯
寒帯とは、一年を通して気温が非常に低い気候帯のこと。南極と北極の周辺に分布している。
寒帯は、一年を通して気温が非常に低く、南極と北極の周辺に分布しています。寒帯は、ツンドラ気候と氷雪気候に分類されます。
ツンドラ気候は、短い夏の間に地表の雪や氷がとけてツンドラと呼ばれる湿原ができ、コケ類などが育つ特徴を持ちます。北極海の沿岸地域に分布し、北アメリカのイヌイットなどの少数民族が生活しています。ツンドラとは、ウラル地方の古語でウゴル語の「木のない土地」に由来するそうです。
氷雪気候は、一年中雪や氷に覆われており、植物はまったく育ちません。グリーンランドや南極大陸などに分布しています。人が暮らすことが困難な地域で、南極などの一部の地域で調査が行われています。
1.6.高山気候について
高山気候
高山気候とは、温帯や熱帯の高山で見られる気候帯のこと。
高山気候は、一年を通しての気温の差が少なく、一日の昼と夜の気温の差が大きいという特徴を持ちます。熱帯では、高温で湿度の高い低地よりも高地の方が生活しやすいので、アンデス山脈などに多くの高山都市があります。
ケッペンの気候区分に高山気候がなかったため、修正が加えられて高山気候が追加されました。そのため、高山気候は他の気候と重複している部分もあります。
2.雨温図について
雨温図
雨温図とは、ある都市の一年間の降水量と気温を表す図のこと。降水量と気温の変化や季節による変化を理解しやすい図となる。
雨温図とは、ある地点の月別の平均気温と降水量をグラフで表したものです。雨温図では一般的に、気温を折れ線グラフ、降水量を棒グラフで表し、左に気温、右に降水量の目盛りがあります。月平均気温の高い時期や低い時期と、月別の降水量が多い月と少ない月に注目して特徴をとらえましょう。
出典など
参考文献
『改定新版 世界大百科事典』2007 平凡社

